個人詩誌『ひやそのほかの』創刊号(2)

個人詩誌『ひやそのほかの』創刊号(2)

2019年11月24日発行

 

 

 

4  やはらかに


やわらかになる身体が
死に逆らい浮かんで
いる船が磔になり
ドクターの治療
を受けている
スピーカー
揺らいで

輝く星

のま

たき
スピカ
を尻尾の
先に飾って
ゆらゆら歩く
首輪無しドッグ
のイメージが毒の
ようにまわりやがて
身体がやわらかになる

 

5  ゆびわが7つ


私たちはみんなで
かわるがわるに
彼女の新鮮な
てのひらを
食べたの
胎の中に
小さな
コンロ
宿して
これ
から
ひと
りの

へ 、

 

6  魚島


中耳腔にひろがる海は
渡らなかったせとうちの海が
流れ込んだものだ
山陽新幹線も届かぬ道行きを
棘のある鯛が白く光らせる


そこに、渦、タイムラインを、逆巻き、鉄仙ひらき、ひらき、いくつも、逆巻き、鉄仙、ひらき、ひらく、花弁の、戦き、そこに、喇叭が
ある、喇叭、震わす、そこ、いっせいに、咳


乳房をはしる葉脈に聴診器をあて
流れる雌性ホルモンエストラジオールが

おれの幻肢の性器を縮こめる
音を聴く


ここに、咲く、絡まる、根、ほぐす、肉体たがやす、ならす、葵の、木漏れ日、ここに、轍、ならし、ならす、発酵すすむ、ふるい、鐘の音、たいらに、たいらに、ここ、自転車の籠、ひびわれる卵、平に


茅渟のお面が歪み
這いつくばって橋をわたる
絶え間なくくりかえす潮汐
知らない魚の島が生まれようとしている


見ろ、鍬で耕し、たがやし、耕す、蒸れて、湿った肢体、見ろ、抜き差し、ぬきさしする、たがやし、先端、見たか、蜂、溢れだし、やはらかな、青いひかり、見ろ、漏出した、菌の傘、えいめい、走る、神経揺らし、見ろよ、
ぼう、
ぼう、
ばっ、 垂れる、

――――小さな 羽音。

 

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