個人詩誌『ひやそのほかの』創刊号(4)

個人詩誌『ひやそのほかの』創刊号(4)

2019年11月24日発行

 

8  産声


女になるまえにもっていたはじまりのことばが古くなっていく。胎をふくらせうまれた空洞におそれが反響する。もう、ひらいているか?  せんせいの指示どおり産声がおとずれるのをまっていて。

 

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9  あらし

 

十一月の旗がゆれ
みえかくれする薔薇の花弁に

熊蜂がうずくまっている
習性にふるえる羽の音をきき
まだ  うまれていない  こども
こどもたち  が
すすりなく


おまえ  は
うまれていない  ものたち  は
そこのまっすぐな産道に
おまえたち  ひっかかっているのね
この先は国道0号線
豪速で行きかうならい
銀の陽射しにすなあらしがまきおこる


おまえたち  の
言葉を憶えるまえの
えいえんのくちびるに
夕暮れる
ムースの色の変わり目を
掬って食べさせてあげたい
繭の糸の凝る点
木々が色濃くなりかかる
交差点で接触する
急ブレーキ


わたしたち は
あなた と あなた は ひとりで
ひしゃげた車のバンパーを割りひらき
わたし の 見ている前で
ふくらむ子宮をつぶし

ぞぞりぞぞり ぞぞりぞぞり
夏を掻きだしている
わたし の
告げるハツハナの
裾を捲り上げる
わたしたち
ここには あらし しかなかった

 

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